統合失調症の治療は、薬物療法が基本になります。しかし、さらに治療効果を高めるには、薬物療法にリハビリテーション(心理教育、生活技能訓練へSST)、作業療法や、家族技能訓練(家族教育プログラムなど)を組み合わせた方が効果的なのがわかってきています。つまり、薬だけでなく、患者さんの生活能力や、患者さんを支える家族のケア能力を高め、一緒に組み合わせることで、治療効果が向上することがわかってきています。統合失調症の治療については、821の国際的な研究をまとめた報告がありますので、それを少し紹介していきます。
この報告は、統合失調症の治療法別に、それぞれの効果を、1年間での再入院率がどの程度のパーセンテージだったかという視点から見ていったものです。それによると、最も再入院率が低かったのは「
薬物療法と家族技能訓練」を受けたグループと、「
薬物療法とリハビリテーション」を受けたグループで、どちらも
8%という結果がでています。また、「
薬物療法と支持的な精神療法」を受けたグループは
20%、「
薬物療法と自己洞察を求める精神療法」を受けたグループは
30%という再入院率でした。「
薬物療法のみ」だったグループも
30%の再入院率でした。また、この調査報告では「
薬物療法なし(別の治療は受けた)」と、「
まったく治療を受けなかった」グループの再入院率についても調べていて、どちらも
70%という結果がでています。これを見ると、薬物療法は再発を半分以下に(
70%から
30%へ)減らしていることがわかります。一方、薬を飲まない治療ではよい効果が得られないことは明らかで、ほかの治療をいくら行っても、薬を飲んでいなければ、まったく治療をしない場合と同じことになってしまいます。また、無意識の心の動きを探って分析するフロイト流の「自己洞察を求める精神療法」は、まったく効果がないことがわかりました。仲間をつくったり、活動的な社会生活をするために、医師が患者さんを励ましながら、いっしょに解決の糸口を探っていく「支持的な精神療法」は、「自己洞察を求める精神療法」よりは効果的でした。しかしこれも、リハビリテーションほどの効果はあらわれませんでした。これらでわかるように薬物療法やリハビリテーションを中心に、統合失調症の治療を行うのが効果的です。
統合失調症は、よく治療不能の病気と思われていますが、実際は治療は可能です。しかし、治癒する(症状の原因が永久になくなる)わけではありません。統合失調症の治療とは、症状をうまく調節するためのものです。統合失調症は、はっきりした病因が判明していないため、治癒を目ざすこととは、現段階では難しい病気です。なので、いまは、よりよい治療法を求めていくしかありませんが、このような病気は他にもあります。例えば糖尿病がそうです。糖尿病と統合失調症には、多くの共通点があります。小児と成人のタイプがあるところ、病因は複数が考えられるところ、経過中に再発と寛解を繰り返すところや薬によって、病状をコントロールできるところも似ています。