統合失調症の原因について
統合失調症の原因としては、遺伝や、社会的、心理的、身体的ストレスなどがあげられます。根本的原因はいまだに不明ですが、いくつかの因子の組み合わせと考えられます。統合失調症の原因について紹介していきます。
統合失調症の原因・複数の因子が存在
統合失調症を引き起こす根本的な原因は、完全には解明されていません。大方認められているのは、次のような考えです。母親の胎内にいたとき、脳になんらかの障害(ウイルス感染、分娩時外傷など)を受けたり、あるいは、病気に対して脆弱な体質を両親から受け継いで、そこに心理的、社会的、身体的ストレスなどが加わったときに、相互に作用して起こるのではないかというものです。つまり、原因は1つだけではなく、いくつかの原因が組み合わさって発症すると考えられています。その組み合わせの要素が1つでも欠ければ統合失調症は起こらない病気だとすれば、その1つをとり除くようにすれば、病気は防げるわけです。現在までの研究で、統合失調症のリスク因子と考えられているものをみてみます。
統合失調症と遺伝の関係
ドーパミン仮説について
脳では、いくつもの神経伝達物質(化学物質)が分泌されていて、神経細胞が情報をやりとりするときの、伝達係のような働きがあります。体を動かしたり、臓器の働きを調節したり、意識や感情の働きにも、神経伝達物質は深くかかわりますが、この中のドーパミン (体を動かす運動系統、食欲中枢、大脳皮質の情動の部分などに関係する)という物質が、統合失調症を引き起こす原因物質になるのではないかという「ドーパミン仮説」が、1970年代に唱えられるようになりました。統合失調症の治療は、1952年にクロルプロマジンという抗精神病薬が使われるようになって、大きく変化しました。それまで治療が困難だった、幻覚、妄想、興奮などの症状が、この薬で改善できるようになったのが理由です。その後、この薬がドーパミン受容体をふさいで、ドーパミンが伝わりにくくなるように作用していることがわかりました。つまり、ドーパミンの情報伝達を遮断すると、統合失調症の症状が起こらなくなり、そのことから、ドーパミンが異常を起こす発現物質ではないかと考えられるようになりました。一部の患者さんの脳内では、ドーパミンが増加しているケースがあることもわかり、「統合失調症はドーパミンの過剰な働きで起こる」とする科学者は多いようです。しかし、この考えはいまだに「仮説」の域にあり、この説では統合失調症のすべてを説明することができない現状があります。特に陰性症状は、ドーパミンを抑える抗精神病薬では効果が出ないため、ドーパミン過剰が関係するとは思われません。最近では、別の神経伝達物質(グルタミン酸=アミノ酸の一種。興奮性伝達物質)の乱れが関係するという仮説も登場していますが、これもまだ研究段階です。
統合失調症とストレスとの関係