統合失調症・ケアマネジメントについて
市区町村の役割が大きくなり、サービス内容の多様化によって精神障害者の為の地域福祉も変わってきています。統合失調症・ケアマネジメントについて紹介していきます。
自宅療法の方向性が示されるケアマネジメント
「ケアマネジメント」は1998年に厚生省(現・厚生労働省)から示された身体障害者・知的障害者・精神障害者のための指針「ケアガイドライン」の考え方がベースになっています。障害者が地域での生活で望んでいることを具体化させるために、さまざまな社会制度やサービスを効率よく利用できるように計画を立て、援助をしていくプログラムです。2003年度より、ケアマネジメントは市区町村の業務に位置づけられ、2004年度からは市区町村にケアマネジメント従事者が設けられるようになりました。当初は実施している自治体の数も少なかったですが、2006年、障害者自立支援法の完全施行によって、ケアマネジメントは市区町村の制度として組み込まれ、身体障害、知的障害、精神障害の3つの障害者施策は一元化されました。サービスの支給決定は、3障害共通のツールで行われるようになりました。制度として整備されることで、とり残されがちだった精神障害者のニーズが掘り起こされるようになりました。ケアマネジメントは、ある種の「意識の変化」を患者さんにも求めるということです。つまり、「自分がしたいことは何か」をみずからに問いかけ、明確にする必要があります。病院という治療の場では、患者さんは医師など専門家の意見を受け入れるだけで、そこに「自分のしたいこと」が入り込む余地はほとんどありません。しかし、自分の生活を豊かにすることまで専門家まかせにしなくてもいいはずです。友達をつくりたい、ひとりで買い物に行きたい、仕事をしてみたい、家族と離れて暮らしてみたい、といった「自分がしたいこと」を、患者さん自身が明らかにしていくべきです。そうすれば、たとえ精神の病という障害があっても、その人らしい暮らしをつくっていけるはずです。思い描いたとおりには進まないこともあると思いますが、ケアマネジメントには、これからの自宅療養の方向性が示されているといえるます。
ケアマネジメントとは
ケアマネジメントは、患者さんの地域生活を支える上で、断片的なサービスでは限界があるため、多様なニーズに応じて、効率よくサービスを提供するためのものです。具体的には、まず利用者のニーズをアセスメント(計算的評価)し、それにもとづいた支援計画を立て、サービスの利用へと導きます。一定期間が経過したら、モニタリングと評価を行い、新たな支援計画につなげます。利用計画を立てる場合は、地域の社会制度(公的サービス)だけでなく、事業体によるサービスなど、インフォーマルなものも選択肢になります。
ケアマネジャーの役割
地域医療に取り組む米国では、ケアマネジャーの仕事の「理想のモデル」を、次のように描いています。
●患者さんとの共同作業で、リハビリテーションのゴールを設定する。
●患者さんを信頼し勇気づける。
●患者さんが住みよい生活環境を獲得する。
●患者さんの生活に必要な資金を調達する。
●患者さんの治療と社会制度をつなぐ。
●患者さんの治療をチェックする。
●患者さんに信頼され安定した支えとなる。
●患者さんの一生を通して援助する。
これは理想なので、現実的には困難なところもありますが、米国が考えるケアのあり方がわかります。