統合失調症・支持療法について
精神療法には精神分析療法、催眠療法、自律訓練法、森田療法等、様々なものがあります。統合失調症の場合は、支持療法と呼ばれる方法で行います。統合失調症・支持療法について紹介していきます。
支持療法について
支持療法の方法について
支持療法は一種のカウンセリングで、「いまから治療を始めます」といった、あらたまったものはありません。日ごろの診察で患者さんと会うときにも、医師は支持療法の観点から、さまざまな話をしています。
●患者さん自身に、自分が病気であることを理解してもらう、つまり「病識」を持ってもらうような話もします。患者さんの中には、「自分は統合失調症ではない、だから薬も必要ない」と、薬を飲みたがらない人がいます。そういう場合は、眠れなかったり、疲れたり、周囲となじめず孤独に感じているのを、どうしたら治せるかといった角度から話すこともあります。
●幻聴が聞こえたり、被害妄想に陥っている患者さんには、その症状よりも、今どのような環境にあるか、家族との関係などについて聞くことがあります。そういったことから、いま自分はどんな状態にあるかを、患者さん自身に理解してもらえるように、話をすることもあります。
●患者さんの病気には、家族など身近にいる人の精神状態が大きく影響します。統合失調症に対する世間の誤解や偏見は根強く、家族は不安や問題を抱えていることが多いです。家族にも、医師のバックアップは必要です。患者さんとの接し方、患者さんを抱えているために起きている家族間のトラブルやストレスなどを医師に相談してみましょう。
悩みや問題といっても、その患者さんの病気の段階、病気によるトラブルあるいは薬の副作用、過ごしている家庭環境、本人の性格、人間関係など、さまざまな要因がからまり合っています。医師は、面談している短い時間の中で、患者さんの表情やしぐさ、何げない世間話などから、背景にあるさまざまな要因を見つけ出し、医師の目で分析したり、整理しながら話します。また、患者さんの病状の変化や心の動きなど、さまざまな情報を受けとり、インプットして、治療に役立てようとしています。支持療法は、医師と患者さんとのコミュニケーションの積み重ねがベースになり、それによって適切なカウンセリングが生まれます。相性が合わないといった問題もあるかもしれませんが、次々と医師を変えていては、治療効果も上がりません。自分に合った医師を見つけるようにして、できるだけ継続した治療を受けるようにしましょう。
精神分析療法はほとんど使われない
支持療法は、自分が抱いていた精神療法のイメージとはかなり違うと思う人もいると思います。精神療法というと、「心の中をのぞく」といったイメージがあるようです。あるいは「催眠術を使って、自分でも気づいていなかった深層心理を表面化し、病気の原因を突き止めて治してくれる」と、魔法のように思ってしまって、過大な期待をかける人もいます。統合失調症は、長期間の治療が必要になります。その為、早く治したい、別の治療法があるのではないかと焦って思うのは、仕方がないところもあります。しかし、ほとんどの精神科医は、統合失調症の治療にフロイト流の精神分析療法を使うことはありません。精神分析療法では、統合失調症は心理的な原因によるものと考える為、患者さんの過去の心的外傷に焦点を当てて洞察する、という方法をとります。しかし、このような方法は効果がないだけではなく、かえって害になることがわかってきています。ある研究家は、統合失調症の人に精神分析療法を行うのは、足を骨折した人にジョギングをすすめるようなものだと表現しています。それは、患者さんの苦痛をますます増やすような行為になってしまいます。しかし患者さんや家族の中にはまだやっていないから可能性があるのではないか」と期待し、精神分析療法を希望する場合があります。医師は、いまの医学の中で可能な最良の治療を提供しようと努力していますし、患者さんとの信頼関係は、精神科医療にとって最も重要なものと考えています。その信頼関係を崩してしまうような治療は行えないということに理解が必要です。