「統合」とは、思考や行動、感情などを1つの目的に沿ってまとめていく能力のことをいいます。「失調」とは、一時的に調子をくずしているものの、回復の可能性があることを示しています。つまり「統合失調症」とは、直接の原因がないのに考えや気持ちがまとめることが出来なくなり、その状態が長期間続くこといいます。そのため行動がぎくしゃくして、困難や苦痛を感じ、回復には治療や援助が必要になる病態だといえます。しかし、目的に沿ってまとまった考えや行動がとれなくなることは、病気ではない健常者にもありえますし、うつ病や引きこもり、適応障害などの場合でも起こります。そこで、診断を確定するために、幻覚や妄想(統合失調症の基本症状)等があるかどうかで判断することもあります。
幻覚や妄想は、統合失調症の初期の頃によくみられる症状ではありますが、この病気特有の症状ではありません。それよりも、統合失調症を特徴づけるのは、日常生活そのものが不安定な状態になってしまう「生きづらさ」といえるでしょう。統合失調症の人が、最も困難を感じるのは、対人関係です。例えば、複数の相手と話し合う場合、話の内容や何が言いたいのか、その場の流れがどうなっているのか、自分はどの様にふるまうべきなのか、といった認識が困難になります。そのために、常識的な応対ができなかったり、ときには的はずれな言動をしたりします。また、服の着がえや料理など、一連の流れのある作業を、自然に順序立てて行うことも苦手になってしまいます。順番を忘れたり、手順を思い出せなくなるのです。日常生活がスムーズに営めなくなる、その苦しさを理解するところに、統合失調症を知る鍵があるといえでしょう。
統合失調症のもう1つの特徴は、症状に「陽性症状」と「陰性症状」の、2つの基本的な型があることです。陽性症状とは、幻覚や妄想、興奮状態などです。その症状は、誰の目から見ても「精神を病んでいる」とを思わせ、狂気を感じさせます。一般の人は、統合失調症の症状というと、まずこの陽性症状を思い浮かべることが多いようです。一方の陰性症状は、自発性が乏しくなる、感情の表現が鈍くなり、人付き合いが苦手になる、精神の柔軟性が失われる、といった状態をいいます。1日の大半をぼんやり座り込んで過ごす無為自閉の状態になるケースが多く見られます。統合失調症では、病気の初期は陽性症状があらわれ、長期になるにつれて陰性症状になっていく傾向が見られます。また、統合失調症になってしまう根本的な原因は完全には判明していませんが、いくつかの研究によって明らかになりつつあります。